親が認知症になってしまった時の不動産の売却方法について
2024/04/11
親が認知症になった時に、親が所有している不動産をどうするか悩む人も多いと思います。家族だから、不動産を売る事が出来るというイメージがあるかもしれませんが、実は親が所有する不動産を売るためには様々な決まりがあるのです。そこで今回は、認知症になった親の不動産を売る方法というテーマで、詳しく解説していきたいと思います。
■認知症になった親の不動産は売れる?
それでは早速、認知症になった親の不動産は売れるのか?という事についてですが、結論から言うと例え家族であっても親が所有する不動産を勝手に売る事は出来ません。その不動産を売る事が出来るのは、不動産の名義人のみと定められているからです。
しかし法律によると、意思能力がない者が結んだ売買契約は無効であると定められており、認知症になって自分の行動の意味を認識できる能力が低くなっている場合は、不動産の売買契約を結んでも無効になってしまいます。
このような場合、不動産の所有者である親自身が不動産の売買契約を結ぶ事が難しくなるため、家族が代わりに売却しようとするケースがあると思いますが、例え家族でも意思能力がない親に代わって不動産を売る事は禁じられており、親族であっても代理人にはなれないのです。ただし、親の認知症の程度によっては、不動産売却が可能になる事もあります。
■認知症になった親の不動産を売る方法
では、認知症になった親の不動産を家族であっても勝手に売る事が出来ないとなると、どのように売却したら良いのか分からないですよね。実は、認知症になって意思能力がない親の不動産でも、法定後見制度を利用すれば売却する事が出来るのです。法定後見制度とは、意思能力がない本人に代わって家庭裁判所が法定後見人を選出する制度の事です。
■法定後見制度を利用して売る時の流れ
それでは、実際に法定後見制度を利用して不動産を売る時の流れについて解説していきたいと思います。
必要書類
法定後見制度を利用して不動産を売る時に必要になる書類は、下記の通りとなります。
・申立書
・不動産会社が作成した査定書
・売買契約書
・不動産の全部事項証明書
・不動産の評価証明書
・本人または法定後見人などの住民票の写しまたは戸籍附票
・800円程度の収入印紙や郵送用の郵便切手
売却までの流れ
まず最初に、法定後見制度開始の審判を家庭裁判所に申し立てます。申し立てに必要な書類を用意して、本人の住所地を管轄する家庭裁判所へ提出します。そして、申し立てが受理されると家庭裁判所が審理を行い、後見人候補者や本人からヒヤリングを行った上で、法定後見人が選任されます。
その後、選任された法定後見人が、複数の不動産会社に査定を依頼し、信頼できる不動産会社の選定を行い媒介契約を締結します。そして、居住用の不動産の場合は、売却する際に裁判所の許可を受ける必要があるため許可を受けます。
裁判所からの許可が出たら、法定後見人が本人の代理として不動産の買主と売買契約を締結します。売却代金の決済が終わり引き渡しが行われたら、不動産の売却は完了です。
■認知症になった親の不動産を売る時の注意点
それでは最後に、認知症になった親の不動産を売る時の注意点について解説していきましょう。
不動産の名義人を確認する
まず1つ目は、不動産の名義人を確認するという事です。不動産の売却は、その不動産の名義人しか行う事が出来ません。そのため、売却したい不動産の名義人が両親のどちらなのかを事前に確認しておく事が大切です。
家庭裁判所に申し立てを行う必要がある
2つ目は、家庭裁判所に申し立てを行う必要があるという事です。認知症になった親の不動産を売るためには、法定後見人を選任する必要がありますが、そのためには家庭裁判所に申し立てを行い、法定後見制度の開始の審理を受けなければなりません。
家庭裁判所に申し立てを行う際には、必要書類を揃えたり、申し立て手数料や登記手数料などの費用も必要になるので、事前に揃えておく必要があります。
財産管理をする場合は毎年収支報告が必要になる
3つ目は、財産管理をする場合は毎年収支報告が必要になるという事です。法定後見人は、財産管理などの代理権が付与されます。
審判によっては、財産管理の同意権や取消権なども付与され、意思能力がない本人の財産や人権が侵されないようにするために10万円以上の支出や財産の処分を行う場合には、家庭裁判所の許可が必要で、毎年の収支報告が義務付けられることになります。
法定後見の審判取り消しは出来ない
そして4つ目は、法定後見の審判取り消しは出来ないという事です。家庭裁判所において、一度法定後見開始の審判が下されると、基本的に審判の取り消しは出来ません。法定後見開始の審判が下されると、不動産の売却だけでなく様々な手続きが必要になってきますが、その時に取り消したいと思っても取り消す事が出来ないので注意しましょう。
■まとめ
さて今回は、認知症になった親の不動産を売る方法というテーマで、詳しく解説してみました。不動産の名義人である親が認知症になってしまうと、不動産の売却を家族が行う事が出来なくなってしまい、法定後見制度を利用する必要が出てきます。
意思能力がない本人に代わって、不動産をスムーズに売却できる方法ではありますが、一度法定後見制度が開始されると取り消す事が出来ないなどの注意点もあります。そのため、出来れば親が健康なうちに所有する不動産をどうするかを、家族で話し合っておくと安心でしょう。
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